That Means A Lot

幻想とじゃれあって 時に傷つくのを あなたは無駄だと笑いますか?

どたばたの総選挙をよそに1人懐古するお話

初夏の暑さにカレンダーより早くシャツの袖口をまくり、たまりにたまった仕事を思い出しながら何から始めるの?と自問自答しながら毎朝7時12分の電車に乗る蟻たちよ…ふともうすぐ総選挙だなあと思ってたら、中止になったんだって!あ、AKBの話です。

今ではみんながあまりにも音痴すぎてAKB48SHOWが音を出して観れなくなってしまったが、自分が高校生でAKBにハマったのが渡り廊下走り隊が完璧ぐ〜のね!を出した頃だったのでかれこれ8年前になる。8年も前になるとオタクがよく言う「あの頃は楽しかった」的なUZAい回顧の域は出て、もはや若き日の思い出になることに気づく。高校生の頃とかにはORANGE RANGEがクソほどダサく感じてたのに、大学生になった時にカラオケで歌うとクソほど盛り上がる。あれみんな歌えるじゃん?的なアレ。

悲しきオタクの性かな、バラ色のはずの高校生活を語る上でAKB48を外すことはできない。「完璧ぐ〜のね!」が入り口で、「マジすか?!学園」と「神曲たち」が僕のAKBの教科書であり、毎週水曜か木曜かは「AKBINGO!」を観て学校に行くのが日課だった。有吉AKBも週刊AKBも観てた。まあよく親はアレに耐えていたと思う。ただお金はあまりないし部活もそれなりに忙しい方だったので握手会はあまり行かなかったから、いわゆる「在宅」と呼ばれるオタクだった。

ただ今になって歴史をきちんと調べたり考えてみると、AKBINGO!には主要メンバーは忙しくて全然収録に出なくなってたし、表現上の問題でBeginnerのMVは流れないし、秋元才加は文春砲を食らってたし、AVに出た卒メンもいたわで、要はもう下り坂になり始めたかという頃だよなあと改めて思う。それでも夢中だったのは事実で、まあよくこれで楽しめてたなあと思う。

今日はなぜそんな時代に夢中になったか考える記事です。

考えてみた結果、主に2つの理由があるとい思いまして。1つは「あの頃の情報社会の仕組みと大本営発表」2つめは「オタクの性質」はないかと。ちょっとカッコつけました。

1つめ、「あの頃の情報社会の仕組みと大本営発表
今でこそスマホTwitterとか普及しきっているけれども、あの頃はみんな普通はガラケーだしTwitterも英語版しかなかった。もちろんAKBとかに対する情報だとかは2chとかでリアルタイムに動いていたんだろうけど、まだ高校生がそんな簡単に情報が手に入る時代じゃなかった(昔より格段に進歩はしてはいたが)。高校生を含めた一般人の情報はまだまだリアルタイムに動いてなかったのである。
だからAKB48みたいに現実っぽい虚構の塊みたいなモノには、運営やメンバーが更新する情報も一定期間に更新されるブログの「大本営発表」が非常に大きな役割を果たしていた。ブログにはまず発信源の意見がでかでかと書かれる。記事に対するコメントは下の方にちっちゃく書かれるだけ。しかも見ようと思わないと見れないような構造になってる上に検閲もできるので嫌なものは弾くことができる。その結果、自然とその記事が正しいのかなあと思えるような体制が出来上がる。いわゆるオタクに対する治安維持、情報統制ができていたのである。
それについてあーだこーだ言える場所はスレとそれについて精通した友達との会話しかなかった。しかも高校生なんて基本情報弱者だし高校生の会話は人間関係第一なので、「松井珠理奈ごり推し反対」とか「ゆきりんは鼻ニンニク」とかいうネガティヴな本音は言えない。

今は話題のブログがあったら民衆がまずコメントを述べたものがTL上にまず現れて発表を知ることが格段に多くなった。かつて大本営発表だったはずのブログはTL上に付箋のようにリンクとして貼り付けられている。自分が第一発見者として記事を見るのと、人の意見を聞いてその記事を見るのではバイアスのかかり具合が変わってきてしまう。役割の逆転が起こっている。
しかし今の46グループは今でもブログの大本営発表形式を取っているのに乃木坂と欅坂の人気はご覧の通りである。その訳は2つめとして述べよう。

2つめ、「オタクの性質」について。
オタクとは基本的に夢中になっている生き物である。夢中な人間というのは周りが見えない。そういう時は大本営発表を信じ込んで悪い噂には耳を貸さなくなるものなので(自分が特にそうだったんだろうけど)、情弱な高校生というお年頃、情報源がある程度制限された当時の状況、そしてアイドルに夢中になった自分というのは、どっぷりハマるのにはうってつけの環境が揃っていたのではないかと思う。それに夢中になる状況というのは、ある程度自分の置かれた状況に満足することも伴うので、例え秋元才加がスキャンダルでキャプテンを降りたりと少しグダグダになっていても気にはならなかったのだろう。

結局オタクーとりわけアイドルオタクーにとって、大切なことは自分が夢中になれるかなれなかということ。あれひどかったけど、夢中でやったから素晴らしく楽しかったという結論。

そして一見時代遅れとも思える大本営発表の形態を取りながら人気を博す46グループ。その訳はトランプ大統領の当選した背景と似ているものがある(詳しくはそれについて書いた記事を検索すると良いと思います)。TwitterなどのTLの特徴は、情報を取捨選択できることにあって、最初の話と矛盾する話に見えるけれども、取捨選択を可能にした情報のリアルタイム化と夢中になったアイドルオタクの性質が融合した時、客観性ではなくて主観性を助長したのである。自分に都合の良いものを集め、いらないものはさようならできる構造は、生田絵梨花大好きマンというのは基本的に他の生田絵梨花大好きマンの意見を尊重するように促したということである。数年前と大本営発表の伝わり方は変わりようとも、タイムラインによって作るコミュニティを信仰者の集まりにしちまえば、もっと夢中になれてしまうという話。

それでもやっぱり醒める時は醒める。それは自身の環境の変化とか人それぞれではあるけれど、何らかのタイミングで自分が現実っぽい虚構の虚構性に気づいてしまう。運営にイライラし始めると醒めるのかなあとか、あとはTwitterとかGoogle+が普及した2011年から2012年以降の時代背景もあったんだろうなあと考えております。AKBもGoogle+で情報のリアルタイム化に乗り出したけど、残念ながらGoogle+がそこまで普及しなかったとかそういう話になるのでしょうか。

ちなみに自分の場合は前田敦子の卒業であり、レコード大賞受賞時のまゆゆの嘘泣きであった。ただそこでアイドルオタクを辞めたかと言えばそうではなくて、そのあとはNMBを追っかけてたんだけど…。あの頃は楽しかったなあという話でした。