That Means A Lot

幻想とじゃれあって 時に傷つくのを あなたは無駄だと笑いますか?

信じることがすべて 明けない夜はないよ 〜ルヴァンカップファイナル準優勝によせた新春ご挨拶〜

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。いやしかし残念でしたねえ。

これは2021年を迎えた柏市出身の人への年始の挨拶の定型文です。関西はもう少し門松が表に出るらしいから今からでも遅くない。覚えておくように。

YBCルヴァンカップの準優勝という結果をもって柏レイソルの2020シーズンは幕を閉じた。不安定な守備陣と、Jリーグレジェンドに名を刻んだストライカーを擁する攻撃陣を抱えたチームはシーズンを通して情緒不安定であり、オルンガパワーで嘘みたいな局面から得点を生み出す反面、嘘みたいな局面から失点も重ね、思い返せば開幕戦で拾い集めた自信と不安を両手いっぱいに抱えたまま、フラフラと中位を彷徨い*17位でリーグ戦を終えた。まあリーグ戦はともかくとしてせめて星を増やすべく臨んだYBCルヴァンカップファイナル、ここ1番の勝負強さとはどこへやら。選手たちは鏡開きをした餅のように硬く、一旦は謎ゴールで追いつくもそのラッキーを生かせず、アダイウトンに一瞬のスピードでぶち抜かれ、勝ち越されてからは試合は正月休みのようにあっという間に時間は過ぎ、呆気なく夢破れたのであった。

敢えて書くことはしないがとんでもないシーズンだった。降格が無くなった異例のシーズンとはいえ昇格組が1桁順位で、MVPも輩出し、カップ戦のファイナルまで残ったのだからから、爪痕は残したという言う見方はできる。しかし9年前に昇格即優勝いう夢物語を成功体験、営業努力と引き換えにチーム強化を宣言している運営と照らし合わせるという贅沢な色眼鏡をかけてから「いるべきところは何処だったの?」と問うと納得はできぬ。

ただ私も齢にして二十七。歳を取って丸くなったか、このシーズンはフットボールが観られただけでありがたい。そうふと落ち着いてしまうのである。東京のスタメン発表前に流れた煽りV、選手入場前の映像で鼻の奥がツーンときてしまった。そもそも我らは11月に不戦敗になってもおかしくなかった身。なのに柏側は何もなかったの。会場入りした際にグランドに向かって一礼すべき。…僅かでも煮え切らない迷いのような心の持ち用はタイトルをかけた闘いの場には相応しくない。カップファイナルとはそういうところだ。

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本来フットボール観戦なんて、酒を片手にチャントを歌い、見知らぬ人とハイタッチやら抱き合ったりして楽しむ娯楽だ*2。生まれて初めて柏を離れ、その声援のない日立台を画面の向こうから眺めるのは苦行そのもの。生まれ育った地元に共にあるという理由で愛し続けたチームを、地元を離れても愛し続けるのはそれなりにエネルギーを要す。スタジアムに通う道、ゲートを潜って緑のグラウンドを見る高揚感、勝って酒がなくとも酔っ払ったように歌いながら自転車に乗る帰り道、負けてヘソで茶を沸かしながら自転車に乗る帰り道。それらをすべて煮込んだものが、地元のチームへの愛をこめたフットボール観戦なのだ。国立で真っ黄色に染まったスタンドの一員で、ここからチャントを歌い、快哉を叫べたらと何度思ったことか。夢のハードルは世界の舞台から身近な日常へと低くなる一方で、苦しい日々もまだ続く。オフシーズンのさよならリリースの嵐に吹かれようとも、こんな時こそ根気強く支えていこうと決意を固める。そんな夕暮れの新国立であった。

最後に、もはや何のために建て直したのか、その目的を見失いつつある国立競技場は、和室にある竹細工の照明のような外見で威圧感や要塞感はないものの、元々が国立競技場なのでアクセスは最高で、背もたれと屋根がついたし、スタグルもパワーアップしていた。コンコースからの眺めは等々力競馬場を思い出したが、日産よりは観やすいのでそんなに悪くない。みんなそんなにいぢめないであげてね。

*1:これまでのJ1での成績を並べるとここが「いるべき場所」とも言えるのはまた皮肉

*2:もちろんたしかに静寂の中、選手の声を聞きながら見るのも、勉強のようでなかなか変態ちっくな娯楽ではあったが